米国のドナルド・トランプ大統領が掲げる新たな関税政策が、ゲーム産業とeスポーツ界に大きな波紋を広げている。
特に、中国企業への規制強化や関税、ビザ発給の厳格化により、業界全体が未曾有の危機に直面する可能性が指摘されている。
中国大手ゲーム企業への規制強化
世界最大級のゲーム企業、テンセントへの規制強化がまず注目を集めている。
Tik Tokなどと同様に近年、米政府から中国軍関連企業として指定され、厳しい監視下に置かれることになった。

このことが原因となり、同社が展開するeスポーツでも人気の『フォートナイト』などが、米国内でサービス制限を受ける可能性も浮上している。
また、テンセント以外にも、『Marvel Rivals』(マーベル・ライバルズ)で知られるNetEase(ネットイース)や、話題作『ブラックミス・ウーコン』の開発元Game Science(ゲームサイエンス)、さらにはFunPlus(ファンプラス)やGameloft(ゲームロフト)など、多くの中国系ゲーム企業が規制対象となる可能性がある。
業界関係者からは、「中国企業への過度な規制は、グローバルなゲーム開発エコシステムを根本から揺るがしかねない」との懸念の声が上がっている。
ハードウェア供給への影響も
ゲームというソフトウェア面だけでなく、IT製品などのハードウェア面での影響も深刻になる可能性があるかもしれない。
ゲーム機器製造に不可欠な半導体の多くが中国で生産されているため、関税引き上げによる価格高騰や供給不足が危惧され、アナリストによると「最大30%の価格上昇も予想される」と述べている。
eスポーツ界、ビザ問題で存続の危機
今回のトランプ氏の政策は、eスポーツ界の選手にとっても、深刻な問題になるかもしれない。
現在でも、東欧、ロシア、東南アジア、南米、中東・北アフリカ(MENA)地域の選手たちは、アメリカのビザ取得が非常に難しい状態だ。
新たな規制導入により、近隣国のメキシコやカナダの選手までもが入国制限に直面する可能性がある。
「国際大会の開催自体が危ぶまれる事態」と、アメリカのeスポーツイベント主催者が発表するような自体にまで発展している。
実際、『ESL One Raleigh』などの主要大会では、参加選手の制限により大会の競技レベル低下が懸念されている。
実際の影響は限定的か
しかし、実際の影響については慎重な見方も存在する。
TikTokの一時的なサービス停止の例を挙げ、「制裁措置が発動されても、即座に深刻な影響が出るとは限らない」と指摘する専門家もいる。
また、過去の関税政策を見ると、多くが議論の末に延期や修正されてきた経緯がある。
eスポーツ業界全体の動き
業界全体では、影響を最小限に抑えようと様々な対策に乗り出している。
複数のゲーム会社が東南アジアなどに新たな開発拠点を設ける検討を始めたほか、eスポーツ団体では、オンラインでの開催を含め、大会の新しい形を模索する動きが出ている。
ゲーム業界団体の幹部は「先行きが見通せない状況だからこそ、あらゆる可能性を想定して備えを進める必要がある」と供述している。
関税政策の詳細が明らかになるにつれ、業界への影響も具体的になってくるだろう。
業界は今、これまでにない困難な局面を迎えているのかもしれない。