Call of Duty Leagueの拡張についての議論

利光 哲也
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コールオブデューティーのリーグ拡張

2025年5月19日、Esports InsiderのJonno Nicholson氏による記事が公開され、Call of Duty League(CDL)の拡張についての賛否が議論されている。CDLは2020年に地理的フランチャイズモデルに移行して以来、世界的なeスポーツリーグとしての地位を確立してきた。しかし、ファンや選手たちの間では、新たなフランチャイズチームの追加によるリーグ拡張の是非について意見が分かれている。

選手にとっての新たな機会

現在、CDLには12のフランチャイズチームが存在し、各チームに4人のスターティングメンバーがいるため、トップレベルでプレイできる選手の数は48人に限られている。この制限により、Challengersリーグで活躍する選手や控え選手たちは、CDLでのプレイ機会を得ることが難しく、多くの才能ある選手が他のeスポーツタイトルに転向したり、競技シーンから引退したりする状況が続いている。

例えば、元Los Angeles GuerrillasおよびMinnesota Rokkrの選手であるRasim “Blazt” Ogresevic(ラシム・“ブラスト”・オグレセヴィッチ)は、CDLからWarzoneのeスポーツシーンに転向し、2025年4月には100 Thieves(100シーヴズ)に加入している。

リーグを拡張し、チーム数を16に増やすことで、16人の新たな選手がCDLでプレイする機会を得られるだけでなく、組織が他のeスポーツタイトルへの参入を拡大する可能性も生まれる。

既存フランチャイズへの影響

CDLの拡張は、世界中の才能ある選手たちに新たな機会を提供する前向きな一歩である一方で、既存のフランチャイズチームにとっては、リーグの安定性や収益性に悪影響を及ぼす可能性もある。

リーグが2020年に発足した際、各フランチャイズスロットには約2,500万ドル(約18.7億円)の価格が設定されていた。しかし、2024年にはフランチャイズ料金が撤廃され、既存のオーナーたちは未払い分の返済を受けるとともに、イベント開催や運営に対する支援が強化された。

このように、既存の12チームの財政状況が安定しつつある中で、さらに4チームを追加することは、過去2年間で達成された成長を不安定にする可能性がある。

一方で、16のフランチャイズチームが次のCDLシーズンに参加することで、リーグ全体の規模が拡大し、より多くの収益を生み出し、より大きなスポンサー契約を獲得し、Call of Dutyの巨大なファンベースにさらにアプローチできる可能性もある。

オープンエコシステムの可能性

Call of Dutyのeスポーツがフランチャイズモデルに移行する前は、地域や予算に関係なく、すべてのチームが最大の舞台で競い合うことができるエコシステムが存在していた。プロリーグの競技と年間を通じた複数のLANイベントの組み合わせにより、世界最高の選手たちがスキルを披露し、アマチュア選手たちにも大きな名前に対してサプライズを起こすチャンスが提供されていた。

Overwatchのeスポーツエコシステムは、フランチャイズから離れ、ESL FACEIT Group(ESLフェイスイット・グループ)によって運営されるオープンエコシステムに移行した。Overwatch Champions Series(OWCS)は現在、3つの地域で運営されており、大規模なトーナメントの間に複数のステージが行われ、北米を中心としたフランチャイズモデルではなく、より国際的なサーキットが形成されている。

Call of Dutyの過去のシーズンでは、Haloで現在採用されているようなオープンエコシステムが使用されていた。アマチュア競技をプロのプレイに統合することで、著名な組織にとっての安定性が確保されるとともに、未発見の才能が大きな名前に対して自分自身を証明する道が提供されていた。

アマチュア選手たちがトップフランチャイズに自分の才能をアピールする手段が不足しているため、同じ選手たちがさまざまなラインナップで入れ替わる状況が続いている。ロースターの変更は多くのドラマを生み出すことがあるが、同じ顔ぶれがチャンピオンシップウィークエンドへの出場を目指して苦戦する姿を見るのは、次第に退屈になってきている。

例えば、Mason “Mercules” Ramsey(メイソン・“マーキュリーズ”・ラムジー)は、Major 3でToronto Ultra(トロント・ウルトラ)の代役を務め、Major 4ではOpTic Texas(オプティック・テキサス)でプレイしている。これは、CDLで最も有名なチームの一つである。一度の目立ったパフォーマンスが、無名の存在をスポットライトに押し上げることがあるが、そのような機会は稀であり、次世代の選手たちは大舞台に到達するのに苦労し続けている。

まとめ

  • CDLの拡張により、選手たちに新たな機会が提供され、リーグ全体の成長が期待される。
  • しかし、既存のフランチャイズチームの安定性や収益性に悪影響を及ぼす可能性もある。
  • オープンエコシステムの導入は、アマチュア選手たちにとっての道を開き、リーグ全体の活性化につながる可能性がある。
eスポーツライター。業界の歴史と最新トレンドを深く理解し、幅広い視点で記事を執筆。戦略分析や選手インタビューを通じて、読者にeスポーツの魅力を届ける。専門的な知見をわかりやすく伝える記事が人気。