中国は現在、世界有数のeスポーツ大国として存在感を高めている。
ゲームプレイヤーの人口だけでなく、配信者やプロチーム、イベント主催者、教育機関まで巻き込む形で、eスポーツは国家的な産業として発展を続けている。
この記事では、急成長する中国eスポーツ市場の最新動向と、世界各国との連携、注目のゲームタイトル、さらにはAIとの融合など、未来につながる動きをわかりやすく解説する。
産業として拡大し続ける中国eスポーツ
中国のeスポーツ産業は、2024年の時点で約5,800億円の市場規模を記録した。
特に配信プラットフォームを通じた収益が全体の約8割を占めており、試合観戦や実況文化が根づいていることがわかる。
また、上海・成都・深圳などの主要都市では、eスポーツ専用施設の整備や人材育成プログラムが積極的に展開されており、地方自治体も産業育成の一環として注力している。
中国が主導する国際eスポーツ大会、欧州や日本との連携も進展
中国はeスポーツの発展を国内にとどめず、国際的な協力体制の構築にも力を入れている。その象徴的な事例の一つが、2025年7月にサウジアラビアで開催予定の「MSC 2025」である。
この大会は、人気モバイルゲーム『モバイルレジェンド:バンバン(MLBB)』の国際大会であり、2025年は「Esports World Cup」の公式種目として、かつてない規模での開催が予定されている。
中国を含むアジア各国に加え、CEEC(中東欧諸国)などの新興地域が正式に参加することで、国際的なeスポーツ大会として注目を集めている。
また、日本からも初めてワイルドカード枠で代表チームが出場することが決定しており、中国を中心とした国際eスポーツネットワークが東アジア全体に広がりつつあることがうかがえる。
『荒野行動』や『王者栄耀』が海外で人気、中国ゲームの世界進出
中国企業によるゲームタイトルも、国際市場で着実に存在感を強めている。
たとえば、テンセントが手がける『Honor of Kings(王者栄耀)』は、2023年に世界で約2,200億円の収益を記録し、160以上の国と地域で配信されている。
また、モバイル版『荒野行動』の収益は、2022年に売上の9割以上が日本からのものであると報告がされた。
こうした企業は、各国ごとにゲーム内容や言語、文化的な要素を細かく調整しながら展開しており、グローバルな戦略性が高い点も特徴だ。
中国のeスポーツでのAI活用事例
中国の大手ゲーム企業では、AI技術をeスポーツに応用する動きが加速している。
たとえばNetEase(ネットイース)は、プレイヤーデータの解析やゲームバランスの調整にAIを活用しており、より精度の高い運営とプレイヤー体験の向上を図っている。
また、テンセントなどもクラウド基盤やAI研究機関と連携し、選手の動きやチーム戦略を可視化・最適化する新技術の開発に取り組んでいるとされ、AIは競技性だけでなく観戦体験の進化にも貢献しつつある。
中国eスポーツ:まとめ
- 中国のeスポーツ市場は約5,800億円規模に成長し、今なお拡大中
- 海外諸国との国際大会や協力も活発化している
- 中国発タイトルは、ローカル適応に力を入れグローバル展開中
- AIとの融合が進み、観戦・競技の質が向上している
- 教育・経済政策とeスポーツを結びつけた長期戦略が進行している
中国のeスポーツは単なるエンターテインメントを超え、文化・外交・技術革新を巻き込む「次のフェーズ」に突入しつつある。