2025年5月24日に、ナイジェリア・オグン州で開催された第22回ナショナル・スポーツ・フェスティバル(通称:ゲートウェイゲームズ)で、ナイジェリアのスポーツ史における大きな転機が起きた。
国主催のスポーツ祭典であるこの大会に、初めてeスポーツが正式なデモ競技として導入されたのである。
ナイジェリア最大級のスポーツイベント「ゲートウェイゲームズ」とは
ゲートウェイゲームズは、ナイジェリア全土の州代表選手が集い、陸上や水泳、バスケットボールなど数十種目にわたって競い合う国家レベルのスポーツイベント。

今回の開催地であるオグン州では「若者の才能と地域経済の活性化」をテーマに掲げ、2025年5月に大規模な競技が展開された。
この中で新たに加わったのが「eスポーツ」だ。デモンストレーション競技という位置づけではあるが、国の公式イベントでeスポーツが取り上げられたこと自体が初の試みであり、関係者や若者の間で注目を集めた。
eスポーツ導入でナイジェリアのスポーツ経済はどう変わる?
ナイジェリアeスポーツ連盟(NESF)の最高執行責任者であるダミローラ・ペドロ氏は、メディア取材の中で「eスポーツは雇用や収益を生み出す新たな経済圏となり得る」と語った。
ナイジェリアのように若年人口が多く、モバイルゲーム文化が根付いている国では、eスポーツが持つポテンシャルは極めて大きい。
また、地方都市でも開催可能な点、スポンサーシップやストリーマー経済との相乗効果などを挙げ、スポーツ経済全体を押し上げる存在になると見られている。
もちろん、制度やインフラ面の課題は残るが、今回の導入によって「国のスポーツ政策にeスポーツが含まれる」という前例ができたことは大きい。
アフリカ現地で活動する日本企業、REEV株式会社の取り組み
このような動きと並行して、ナイジェリアやケニアといった地域でeスポーツの社会活用を進めているのが、日本のREEV株式会社である。

REEV株式会社は、アフリカでプロeスポーツチームを運営するほか、教育・福祉・テクノロジー支援を融合した取り組みを現地で展開している企業だ。
ケニア・ナイロビのキベラ地区では、プログラミング教育や自己表現の場をeスポーツと組み合わせて提供。
同社はその社会的意義と実績が評価され、『Forbes JAPAN 100』にも選出された。
これは、単に“日本企業が海外展開している”というだけでなく、現地に根差し、教育・地域開発と連動した持続可能な活動が評価された形である。
アフリカのeスポーツはどこへ向かうのか
ナイジェリアにおけるeスポーツの国家導入と、REEV株式会社のような草の根活動は、異なるレイヤーでありながら同じ未来を描こうとしている。
それは、eスポーツを単なる娯楽やプロ競技としてではなく、教育・雇用・表現の場として捉える発想である。
今後、ナイジェリアに限らずアフリカ諸国において、eスポーツが学校教育や地域政策に取り入れられていく可能性は高い。
その実例として、日本企業が現地と対話を重ねながら築いたモデルは、アジアとアフリカの協働という点でも貴重な先行事例といえる。