eスポーツ界において、人工知能(AI)の活用が本格化し始めている。
韓国を拠点とする世界的eスポーツ団体Gen.G(ジェンジー)は、分散型ビデオ配信技術などで知られるTheta Labs(シータ・ラボ)との提携を発表した。
Gen.Gは独自のAIチャットボット「Genrang.bot(ジェンラン・ボット)」を開発し、公式WebサイトおよびDiscordサーバー上にてサービス提供を開始している。
このAIチャットボットは、バイリンガル対応であり、eスポーツの試合情報、チーム関連のトリビア、最新ニュースなどをリアルタイムで提供する。ファンと選手・チームとの距離を縮める新たな接点として、今後の展開が注目されている。
Theta Labsとの技術的提携がもたらす価値
Genrang.botの裏側には、Theta Labs(シータ・ラボ)が提供するクラウドインフラ「Theta EdgeCloud(シータ・エッジクラウド)」がある。
このシステムは、Google Cloud(グーグル・クラウド)やAmazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス)などの大手クラウド企業と連携し、世界中に分散した3万以上の接続ポイントを活用している。
これにより、膨大な情報処理能力を確保しており、Genrang.botは常に快適かつ素早い応答を可能にしている。
さらに、この高性能な基盤によって、ボットはユーザーごとの質問に柔軟に対応できるカスタマイズ性も備えている。
eスポーツとAIの未来
今回の取り組みは、eスポーツにおけるAI技術の新たな活用事例として大きな意味を持つ。

従来、AIといえば戦術解析やスクリムの最適化など「裏方」での活用が中心であったが、Gen.GのようにファンとのコミュニケーションにAIを用いる試みは斬新である。
中国では、すでに大規模大会の運営や観戦体験の最適化にAIが導入されており、世界的にこの流れは加速している。
AIチャットボットが普及すれば、試合当日の情報提供、選手紹介、名場面の再生など、ファン体験の質が飛躍的に向上するだろう。特に日本を含む多言語対応のBotは、グローバルファンにとって大きな価値を持つ。
世界的な広がりとTheta Labsの実績
Theta Labsはこれまでにも、Cloud9(クラウドナイン)、FlyQuest(フライクエスト)、NRG(エヌアールジー)など著名なeスポーツ団体と提携してきた。
さらに、ラスベガス・ナイツやニュージャージー・デビルズといったNHLチームや韓国の複数大学との協業実績もある。
また、出資者にはサムスン、ソニーなど、グローバル企業が名を連ねており、その信頼性も高い。
AIが変えるeスポーツの体験価値
今後、AIチャットボットはチーム単位にとどまらず、大会主催者やプラットフォーム全体へと広がっていく可能性がある。
たとえば、試合中の実況補助や、視聴者参加型のインタラクティブ体験なども現実のものとなるだろう。
今回のGen.GとTheta Labsの提携は、単なるチャットボット導入にとどまらず、eスポーツという枠を超えたデジタルコミュニティのあり方に一石を投じる取り組みである。
AIとeスポーツの融合が今後どのように進化していくか、引き続き注視する必要がある。