eスポーツは今や、世界的な競技として認知されるようになってきた。
プロ選手はもちろん、大学チームやアマチュア層にも競技の幅が広がる中、見過ごされがちな課題がある。それが「メンタルヘルス」である。
試合中の集中力や判断力、SNS上の批判、英語によるコミュニケーションストレスなど、eスポーツならではの精神的負担は少なくない。特に日本では、まだこのテーマに触れる機会が少ないが、海外ではすでに対策が始まっている。
アメリカの大学がeスポーツ選手に導入した心のケア対策

アメリカ・ノースダコタ大学(University of North Dakota/UND)では、2025年春からeスポーツチームに向けて、NCAA(全米大学体育協会)が提唱するメンタルヘルス・プログラムを導入した。
従来は陸上やバスケットボールの学生アスリート向けに用意された仕組みだが、eスポーツ選手にも同様のストレスがあると判断されたためである。彼らは試合が連続するシーズンの中で、心身の疲労を蓄積しやすく、集中力や人間関係に影響を及ぼすケースもある。
UNDでは、10分程度のスクリーニングテスト「CCAPS」を通じて、うつや不安傾向を早期に把握し、必要な支援につなげる体制を整えている。選手自身だけでなく、キャプテンやコーチが心理的な変化に気づけるよう訓練も行われている。
なぜ今、eスポーツとメンタルヘルスなのか?
eスポーツ選手のストレス要因は、従来のアスリートと多くの共通点を持つ。プレッシャー、失敗への恐れ、チーム内の人間関係。そこに「試合中の突然死(ゲームから一発で脱落)」「SNSでの炎上リスク」など、デジタル競技ならではの課題が加わる。
こうした環境では、ストレスに押しつぶされる選手も少なくない。
「ゲームでストレスを発散していたはずなのに、逆にゲームで追い詰められている」という声もある。だからこそ、eスポーツ界におけるメンタルサポートは、今後の成長と持続可能性の鍵を握る要素である。
日本でのメンタルヘルスの動き
日本では、eスポーツやメンタルヘルスの重要性が十分に語られてこなかった面もある。競技として捉えるならば、心のケアもトレーニングの一部である。実際に、スポーツ心理学の知見を活かしたコーチングや、ストレスマネジメントの導入は、パフォーマンス向上にもつながる。
世界の大学やプロチームが取り組みを始める中で、日本でも同様の支援体制が求められている。eスポーツ選手は「見えない戦い」と日々向き合っているのだ。
まとめ
- eスポーツ選手は従来のアスリートと同様に、高いストレス環境で競技している
- アメリカの大学ではメンタルトレーニングの導入が始まっており、チームの支援体制が整備されつつある
- 日本でも、競技力だけでなく選手の心の健康に目を向ける視点が今後さらに求められていくであろう