ベトナムと韓国がeスポーツ分野で協力強化へ

徳本 翔太
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ベトナム&韓国のeスポーツ協力

急成長を遂げるベトナムのeスポーツ業界に、韓国が手を差し伸べる形で新たなパートナーシップが誕生した。

両国は選手育成や教育プログラムの強化を通じ、eスポーツの専門化と国際大会での活躍を目指す。また、国内企業の支援とともに、eスポーツは単なる娯楽を超えて経済や教育とも密接に結びつく存在になりつつある。

ベトナムと韓国がeスポーツで連携強化

KeSPAグローバルeスポーツフォーラム2025

2025年6月、ソウルで開催された「KeSPAグローバルeスポーツフォーラム2025」の場で、ベトナム娯楽・電子スポーツ協会(VIRESA)と韓国eスポーツ協会(KeSPA)が協力覚書(MoU)を締結した。

この協定では、選手や人材の交流、教育・育成、合同トレーニングや文化交流イベントの開催など、eスポーツの持続可能な発展に向けた包括的な連携が約束されている。

VIRESAの会長であるド・ヴィエット・フン氏は、「韓国の国際的なeスポーツ実績から多くの知見を得ることで、ベトナムも国際水準の競技力を目指せる」と期待を寄せた。

地域イベントでの活躍を目指す

この協力は、2021年に始まった両国の提携の延長線上にある。これまでにも友好試合やフォーラムの開催を通じ、両国は共に発展の可能性を探ってきた。

今後は、以下の主要大会におけるベトナム代表チームの強化が視野に入っている。

  • 2025年12月:第33回東南アジア競技大会(SEA Games)
  • 2025年10月:アジアユースゲームズ
  • 2026年:第20回アジア競技大会(ASIAD)
  • 2027年:オリンピックeスポーツ大会

国内でも市場が拡大中、VNGGamesが主導

ベトナムのeスポーツは若年層の支持と企業の後押しを受けて急成長している。

2023年には国内のファンが人口の16%に達すると予測され、インドネシアや台湾と並ぶ市場規模になると見込まれている。

2023年の賞金総額は約2億5,500万円(410億ベトナムドン)に達し、前年から約32%増加。さらに、国内のeスポーツ収益は約9億円(578万ドル)を超え、前年比11%の成長を記録した。

リーグオブレジェンドの国内大会「VCS(ベトナムチャンピオンシップシリーズ)」では、毎シーズン100万回以上の視聴を記録している。

経済・雇用への広がる波及効果

eスポーツは今や経済成長のドライバーとしても注目されている。

2022年にサンフランシスコとニューヨークで開催された世界大会では、約82億円(5,300万ドル)の経済効果を創出。2024年の世界大会でも、ロンドンで約24億円(1,550万ドル)の経済波及が予測されている。

また、コンテンツ制作、ソフトウェア開発、マーケティングなどの分野で、eスポーツは新たな雇用を生み出している。アメリカでは2023年に5万人以上の雇用を支え、2025年までにさらに20%の増加が見込まれている。

教育分野へも進出、公式カリキュラムも始動

ベトナムではeスポーツの教育的価値も見直されつつある。

いくつかの大学ではすでに正式な研修プログラムが始動しており、例えば工科大学経営学部(UTM)はイギリスのBTEC基準に準拠したカリキュラムを導入。

2024年9月からは、郵政電気通信工科大学もゲーム専攻の学生を受け入れる予定だ。

ライアットゲームズのアジア太平洋地域ディレクターであるローラ・リ氏は、「eスポーツが真に社会の一部として認められるには、税制優遇や法整備、教育制度への統合といった政策面での支援が必要」と語っている。

eスポーツライター。国内外のeスポーツやゲーム業界のニュースを中心に、アップデート情報や選手・チームの動向を幅広く情報収集。 対戦型タイトルやチーム競技を中心に、スピードを重視をした情報提供を心がけている。 さらに、読者にとって「実用的でタイムリーなニュース」を届けるということをモットーとしている。